「先生、中性脂肪が高いのですが、
どうなんでしょうか?」
について。

結論としまして、
ほとんどの場合で、
中性脂肪「自体」は下げる必要はありません。
治療すべきは別の事項です。
中性脂肪が高いのは単なる結果です。
中性脂肪が高い事は、動脈硬化の原因ではありません。
動脈硬化の原因は炎症にありますので、
中性脂肪自体は空腹時で1000以上でなければ(乳びの状態でなければ)
気にする必要がありません。
炎症についてはコチラを参照ください。
「動脈硬化の原因」
<どんな時に上がるの?>
まずは中性脂肪がどんな時に上がるか?です。
中性脂肪が上がるのは
糖質を摂った時と、
脂質を摂った時です。
これは生理学的事実です。
どの生理学の教科書にも載っているような内容です。
では、それぞれ順番に書いていきます。
<糖質を摂った時は?>
例によって、いきなり結論です。
糖質は積極的に控えるべきです。
糖質を摂った時にどうなるか?
血中の中性脂肪が増える前に、血糖値があがり、インスリンが分泌されます。
血糖値があがれば体に糖化が起きます。
亀川先生の講演に出てきた、体が「焦げる」という事です。
亀川先生講演
インスリンが分泌されるとどうなるか?
高インスリン血症はある種の癌との関連が各種論文で出ています。
またアルツハイマー型認知症との関連性も言われていますし、
肥満の原因となります。肥満となればHDLも低下します。
糖質摂取で中性脂肪が上がるのは、インスリンが出た結果です。
中性脂肪自体が悪影響があるのではなく、
糖質とインスリンに
動脈硬化の作用があるのではないか?
と最近は考えています。
血中の中性脂肪の上昇は単なる結果で、
原因ではないのではないか、という事です。
また、肥満があるなら糖質制限でやせれば
中性脂肪の数値も、ついでにコレステロールの数値も、
何なら脂肪肝の数値も、改善します。
<脂質を摂った時は?>
例によって、いきなり結論です。
脂質だけを摂って中性脂肪が上がったとしても
動脈硬化をするという証拠はひとつもありません。
実は、中性脂肪が直接的に動脈硬化を起こすという証拠は、今の所ありません。
「でも、中性脂肪がヤバイっていう話を良く聞くよ!」
そう、良く聞くと思います。
私も散々、ヤバイヤバイと言ってきました。
そのヤバイのは何故か?というのをみると、
「統計的に中性脂肪が高いと病気になる」
という事を指しています。
これは、
中性脂肪の高い人達を集めてみたら
病気になる人が多かった
という事です。
そして、その「中性脂肪が高いと〜」というのは、
何と!!
糖質による高中性脂肪血症と、
脂質による高中性脂肪血症を
全く分けていません。
そうなってくると、今までの
「中性脂肪が高いと病気になる」は
糖質による血管障害の結果を見ていた
のではないか?、
という考えも当然、浮かぶと思います。
中性脂肪はたまたま現場にいたから悪者にされた。
LDLコレステロールや、乳酸や、ケトン体などに似ていますね。
また中性脂肪と病気の結果だけを統計学的に見た場合も、本質的な原因を考えないと、単純に「中性脂肪が高いと病気」という結果が出てしまいます。これは、統計という方法の限界です。
実は、
中性脂肪が直接的に
動脈硬化を引き起こすという
生理学的な根拠はありません。
世界の誰ひとりとして、中性脂肪がどのように動脈硬化を引き起こすか、生理学的に説明できないのが現状です。
small dense LDLが・・・となっても、そのsmall dense LDLの動脈硬化への関与が不明瞭です。
という事で、「中性脂肪が高い」という事自体は、せいぜい、上で書いた「統計学的に影響がある」という事だけです。
つまり、脂質だけをとった時にも中性脂肪はあがりますが、それで動脈硬化する、という証拠はひとつもないのが現状です。
最近では
「脂質による中性脂肪の上昇は、
動脈硬化と無関係ではないか?」
という考えが現実味を帯びてきています。
また、海外に目を向けると別な視点もあります。
欧米で、中性脂肪で薬を飲む基準は
(家族性高脂血症が疑われる場合を除いて)
1,000mg/dLです。
日本では現在、150mg/dlが脂質異常症とされ、薬が処方されます。
おや?
ずいぶんと差がありますね?
日本では脂質に関する学会も2つあります。
日本動脈硬化学会
http://www.j-athero.org
こちらが現在の日本の基準値を提唱しています。
ホームページ下部に製薬会社のリンクがあります。
日本脂質栄養学会
http://jsln.umin.jp
どうでしょうか。
両学会を、比べてみると勉強になると思います。
このようなギャップについて考える事で、
色々な面から見ることができます。
どちらにせよ、動脈硬化が疑われる場合は、論より証拠という事で
頚動脈エコー検査
ABI検査
を受ける事をお勧めします。<でも、中性脂肪を下げたいんです!>
健診とかで色々言われたくないんです、などなど。さて、中性脂肪は直前の食事に左右されます。
血糖値と似ていますね。
つまり単に中性脂肪の数値を下げるだけなら、事前に食べなければ良いです。
何を食べると中性脂肪が上がるか?
中性脂肪が上がるのは
脂質を摂った時と、
糖質を摂った時です。
つまり、
中性脂肪を下げるだけなら、
脂質と糖質を長時間食べなければ
そのうちに下がります。
で、もう少し食べ方を・・・という方に。
脂質は体に必要な分は摂取する必要がありますが、肥満がある場合は腹回りにいっぱい脂質を蓄えていますので、動物性蛋白質と一緒に食べてしまう分だけでOKです。追加で脂質だけを摂る必要はないでしょう。
さらに断糖的な感じになり1日1食的になると、
食事回数も減るので中性脂肪が上がる機会自体が減ります。
最近は私も専ら、1日1食です。
慣れると快適ですよ。
「1日1食?」
〜〜以下は基礎編です〜〜
よく訊かれれる事をざざっと書いておきます。まず、基本的にコレステロールと中性脂肪の区別がついていないのが、普通の方です。
「何となく名前くらいは・・・」というくらいが普通です。
上の図を見ると分かりやすいでしょう。
<コレステロールって?>
よく言う、LDLコレステロールや、HDLコレステロールは色々くっついているものです。
肝臓などでこういうのを組み合わせて、血管の中に送り出します。
そして体を作る材料になったりします。
LDLコレステロールは血管壁にくっつき、傷ついた血管を治します。
またLDLコレステロールが高い方が感染症のリスクが減るという基礎研究もあります。
日本ではLDLコレステロールを「悪玉コレステロール」と呼んでいますが、欧米では悪玉とは言いません。
HDLコレステロールは血管壁にくっついたLDLコレステロールを回収します。
いわゆる「善玉コレステロール」と言われるのは、HDLコレステロールです。
こういう図の説明、病院の外来で行っている時間がありません。
説明していると外来が2時間待ちとかにすぐになります。
なので見た事もないのが普通です。
<善玉、悪玉?>
よく間違いがちなのは「善玉菌」「悪玉菌」です。これは腸の中の細菌について言ったものです。
コレステロールは血管の中の話です。
全く別ですね。
また、コレステロールも腸内細菌も、善玉・悪玉という言葉は、
テレビなどで言われている事です。
その知名度とは裏腹に、科学的な裏付けはとっても薄いのです。
実際は、コレステロールも腸内細菌も、
そんなに単純に2つに分けられません。
メディアに振り回されないようにしましょう。
<中性脂肪って?>
中性脂肪(トリグリセライド)はHDLコレステロールやLDLコレステロールの中にも入っています。
これは体のエネルギーになります。燃料ですね。
さて、中性脂肪についても我らが江部先生がいくつか書いてくれています。
さすが江部先生。
これを見ない手はありません。
ドクター江部の糖尿病徒然日記
中性脂肪と糖質制限空腹時中性脂肪と食後中性脂肪
とても勉強になりますね。
<体脂肪と中性脂肪?>
これも間違いがちです。体脂肪は、肥満細胞に蓄えられた脂肪などを指します。
内臓脂肪や皮下脂肪です。
血管の外の話です。
皮下脂肪は、「お腹まわりの贅肉」というやつです。
腹直筋の外側ですので、手でつまめる部分です。
一方、採血で調べる中性脂肪は、「血清中の中性脂肪」で、血管の中の話です。
<中性脂肪は一時的な数値?>
上で、中性脂肪は糖質と脂質を食べると上昇する、と書きました。すると、中性脂肪は一時的な数値なのでしょうか?という疑問を持つ方もいるでしょう。
そうです、中性脂肪は常に一時的な数値です。血糖値と同じです。
単に、検査で低い数値を出したいなら、絶食時間を長くすれば中性脂肪は低い数値になります。
中性脂肪の数値で、一喜一憂してもしょうがありませんね。
とはいえ、中性脂肪が1000以上の時は急性膵炎を起こすリスクの高いので、注意は必要です。
以上、中性脂肪について、でした。
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